注文住宅を建てる際に、ハウスメーカーさんづてに話を聞いたり、防音工事業者に実際の施工現場を見せてもらったり、防音資材を取り扱う建材屋のショールームに行ったりして、防音室付きの家を建てた際のレポ記事です。
新築の注文住宅だけでなく、防音ボックスの購入やリフォームで防音機能を追加する場合にも参考になる内容と思います。
※2022年ごろの情報のため、技術が進化してたり価格が変動しているかもです。
ハウスメーカーさんから提案された3つの方法
1. 新築の遮音性能ならそれだけでけっこう強い
最近は木造住宅でも遮音性能が高く、住宅展示場で実際に音を出させてもらったのですが、窓の少ない部屋であればかなりの遮音ができています。
窓を防音仕様の最小のものにしてもらったり、後述の方法で窓のない部屋にしてもらうだけで、新築戸建てなら十分な場合があります。
2. 建材会社さんの資材でハウスメーカーさんが施工する
防音室の提案もしている建材会社さんから資材を購入し、ハウスメーカーが施工する方法です。
作った家の壁の上に防音資材を貼っていく形で、リフォームの範疇に近い施工になります。
8畳のスペースに6畳程度の防音室を作る場合、+200万~250万円程度の見積もりでした。
ハウスメーカーさんも引き受けてくれやすいですし、「ハウスメーカーさんには広めに部屋を作ってもらい、引き渡し後に防音リフォームの工事をDAIKENさんなどへ依頼する」という手順でも可能です。
3. 専門の防音業者さんに施工してもらう
ハウスメーカーさんには基礎や他の部屋までを施工して引き渡してもらい、あとから防音業者さんに入ってもらう方法です。
振動を伝える縁を切る工法など、最も高い防音性能を実現できますし、2と同等の物でも専門で施工しているところにお任せできるという安心感があります。
費用は遮音性や依頼先によりけりで、250万~400万円程度の見積もりでした。
400万円の予算があれば、YAMAHAさんの「アビテックス」のような最上級の防音室も選択肢に入ります。
ただし、ハウスメーカーさんによっては「引き渡し後も検査してお付き合いしていく家なので、その状態での引き渡しはできない」といった規定があったり、ハウスメーカーさんの使用する資材に縛りがあって防音業者の要望通りの施工ができないケースもあります。
防音業者の選び方
3番目の方法で防音業者に依頼する場合、自分で業者に連絡し、打ち合わせで要望を伝えてすり合わせ、内容が固まったらハウスメーカーに引き合わせて施工内容を説明してもらう流れになります。
どこをどう施工するか、どのような状態で引き渡してほしいかをしっかり説明してもらわないと、ハウスメーカーが配線用に大きな穴を開けたり、不要なクロスを貼ったり、防音ドアをはめ込みたい場所に柱を作ってしまうことがあります。
この打ち合わせの段階で業者の施工内容をチェックできるだけの知識がないと、安易に「防音室施工できます」と謳う業者を見抜くことができません。
コロナ禍以降、防音室を施工できると謳う業者が急増したそうですし、ドラム用の防音室で700万円かかるところを500万円で請け負った業者が、防音しきれず隣人からクレームを受けて訴訟になった、という事例もあるそうです。
業者を見極める自信がない場合は、ギャンブルはせず、お金を積んでYAMAHAさんに依頼するのが安心でしょう。
防音の基本的な仕組み
業者さんを選ぶためには、ある程度防音の仕組みを理解しておく必要があります。
防音の基本は「吸音」と「遮音」、そして「制動」です。
吸音は広がったり響いたりする音を吸収すること、遮音は音が伝わるのを遮ることです。
制動は振動自体を抑えて伝わりにくくすることを指します。
これらを壁や吸音材、空気の層(空間)などで実現します。
音の振動は隙間があると漏れ、構造物同士がつながっていると伝わってしまうため、究極の防音は空中に浮いた状態で層を設ける構造です。
これが「縁を切る」と呼ばれる方法で、鉄骨で部屋の中に家を建てるような構造(アビテックス方式では地面だけ接地)にしたり、天井を防振ゴムで吊ったりします。
そこまでの防音性能を求めない場合や、予算的に難しい場合は、縁を切らずとも、音を伝えにくい素材で壁を覆うだけの方法もあります。
家で映画を大音量で観たい程度であれば、それで十分な場合もあります。
各部位のチェックポイント
天井も壁も縁を切った状態で、音が漏れる可能性があるのはドア、窓、床、壁です。
音楽をする、夜中に気兼ねなく叫ぶ、絶対に身バレしたくないなど、こだわる必要がある方はチェックしてみてください。
ドア
防音ドアは20万~40万円程度しますが、防音室にとって重要な部分です。
施工業者がドアを製作するわけではなく、防音ドアのメーカーから購入して設置する形になるため、見積書で指定したグレードのドアが記載されているか確認すれば問題ありません。
5万円程度の防音ドアで「25dB程度音を遮れます!大声で歌ったり叫んだりするとデパートの店内くらいの騒がしさが外にわります!」みたいな性能では意味がありません。
-35dB防音タイプなど、しっかりしたグレードのドアが指定されているか確認してください。
前室
縁を切る方法で防音室を建てる場合、前室の設置を提案されると思います。
廊下や他の部屋から防音室をさらに隔てるための空間で、前室と防音室の間には若干の隙間があり、振動が伝わらないようになっています。
廊下と前室の間のドアも防音仕様にできれば、さらに遮音性が高まります。
最近は玄関のドアの防音性能が結構高いので、「家の中に多少漏れても、外に漏れなきゃ問題ない」という考えであれば、前室側のドアを5万円程度のものにしても十分かと思います。
窓
窓は隙間ができやすく、壁よりも薄いため、音が漏れやすい部分です。
そのため窓を作りたくないのですが、建築基準法で、居室の床面積の7分の1以上の窓を採光のために設置することが定められています。
防音仕様にする場合は、厚く遮音フィルム入りの合わせガラスにし、ゴムパッキンを締められる金属枠の防音用サッシにし、空気の層を作るために二重サッシにする、等の対策が必要になり、費用がかなり高くなります。
防音ガラスを注文していても、サッシに気を遣わず隙間が空いていたり、通常のパッキンのままで音が漏れ放題だったり、という業者の事例もあるため注意が必要です。
換気の問題を別でクリアできるなら、開閉しない採光専用の防音窓にしたほうが安全です。
開閉しない窓であれば、角度や間の厚みを変えて2重、3重サッシにするなど、より高い遮音性能を実現できます。
3重にまでするのはドラム用くらいかもしれません。
窓を不要にする方法
前述の採光基準が適用されるのは「居室」の場合です。
防音業者さんを別で入れる場合、「納戸」(物置)の分類で申請してもらえれば、採光基準が適用されないため窓を付ける必要がなくなります。
ハウスメーカーさんにはコンクリートや石膏ボードがむき出しの状態で検査を通してもらい、引き渡し後に防音業者さんが施工する流れです。
これであれば窓が不要となり、コストダウンと防音性能の向上を同時に実現できます。
引き渡し後に納戸を収録部屋として使うのは家主の自由です。
換気の対策
納戸として申請した場合、24時間換気の全館空調も窓もない部屋になるため、換気対策が必要です。
DAIKINさんなどが販売している、吸気も行えるエアコンを設置すれば、空気の取り込みはエアコンで対応できます。
排気については、遮音カバーを付け、吸音性に優れたグラスウールのダクトを通し、高低差で距離を稼いで外へ排出します。
排気先は家の外でも良いですし、多少は漏れる音を気にして家の中に排気するものよいでしょう。
なお、施工の流れとしてはハウスメーカーさんの引き渡し後に防音業者さんが施工し、最後にエアコンを量販店で購入して取り付けてもらう順番になります。
防音室の壁は通常より厚く、縁を切る方法を取っている場合はさらに厚くなるため、エアコン設置業者さんがその長さのドリルを常備していないおそれがあります。
量販店を通じて事前に壁の厚さを伝えておき、必要であれば防音業者に相談してドリルの先端をお借りするなどの対応が必要です。
床
床の防音には、支えるための鉄筋、音を伝えにくい遮音床、振動を伝えないための防振ゴムやクッション材を使用します。
クッション材よりも防振ゴムのほうが性能がよく、その分高価なのだそうです。
床に関しては特に、防音業者さんの施工と同じくらい、ハウスメーカー側の基礎の施工が重要になります。
鉄筋コンクリートの基礎の立ち上がり部分と土台の間(約2cm)に使用するパッキンについて、通常の換気用の基礎パッキンではなく、気密パッキンを防音室周りだけ使ってもらうようにハウスメーカーに依頼してください。
ただ、営業さんを通じて依頼していても、現場判断でコーキング材での施工に変更されてしまうこともあるため、そうなった場合は防音業者さんに、追加対策が必要か確認してもらいましょう。
壁
壁の防音は、縁を切って壁との間に空間を作り、さらに防音室の壁の中にグラスウールを充填して吸音をする構造です。
ポイントは2つあります。
1つ目は、空間は広く、壁は厚く重くするほど遮音性が高まるという点です。
壁との隙間は20cmよりも30cm、壁の厚さは5cmよりも10cmのほうが遮音性能が高くなります。
吸音材も発泡スチロールよりグラスウール、グラスウールも32Kより64Kのほうが密度が高く遮音性に優れています。
ハウスメーカー側で壁に使うプラスターボードも、12.5mmより15.0mm、1枚より2枚の重ね張りのほうが遮音性が高くなります。
ただし、その分室内が狭くなるため、どこまで許容できるかの判断が必要です。
2つ目は、同じ素材を重ねるだけでは「コインシデンス効果」が発生するという点です。
コインシデンス効果とは、特定の高さの音が特定の角度で壁に当たった際に、音の振動が壁の振動と一致して通り抜けてしまう現象です。
これは素材の種類、厚み、重さごとに異なるため、プラスターボード15mmを3枚重ねるよりも、15mmと21mmの重ね張りのほうが効果的です。
同様に、グラスウールだけでなくロックウールも組み合わせて壁に詰めてもらうことで、効果の上昇が見込めます。
ただし、プラスターボードはハウスメーカー側の工事になるため、取り扱える資材に縛りがあります。
15mmのプラスターボードしか取り扱いがなく、15mm2枚の重ね張りになる、といったケースは珍しくありません。
その場合は、遮音シートを追加するだけでも効果があるそうです。
壁の配線穴とコンセントについて
電気の配線や有線LAN用の空配管は、ハウスメーカー側でプラスターボードに穴を開けて長めに出しておき、防音業者が最終的な位置に収める流れになります。
この穴が大きいと、壁の遮音性能が無意味になってしまいます。
必要に応じて画像を見せるなどをし、穴を小さくするようにハウスメーカーにしっかり伝えてください。
現場に伝わっていないと、普通に大きな穴を開けられてしまうことがあります。
大きな穴が開いてしまった場合はパテで埋めることになりますが、もちろん遮音性が低下します。
コンセントボックスも通常壁に穴を開けて取り付けるものなので、ハウスメーカーさんには設置してもらわないでください。
防音室の内側に、穴を開けずに取り付けられるコンセントボックスを防音業者に設置してもらいましょう。
絶対に大きな穴を開けさせないでください。
室内の広さと天井の高さ
防音性能を突き詰めると、壁が厚くなり天井も下がるため、室内のスペースが狭くなります。
天井高210cmは160cmの人が腕を上に伸ばした高さ程度しかなく、意外と窮屈です。
すべての壁で最高性能を追求する必要はなく、壁の厚さを10cmではなく5cmにする代わりにグラスウールの密度を16Kから32Kに上げる、空間の幅を調整する、といったバランスの取り方があります。
施工内容について詳しく相談できる防音業者さんであれば、「6畳は確保したい」等と伝えれば、予算に応じた防音性能の確保方法や、ハウスメーカーさんへの図面変更の提案をしてもらえるはずです。
天井の高さを確保する方法として、数十万円程度の追加費用でその階の天井の高さを上げてもらうこともできますが、おすすめはベタ基礎の上に防音室を作る方法です。
ハウスメーカーにはベタ基礎の状態で引き渡してもらい、防音業者にその上で防音室と前室を建ててもらいます。
私はVR機器を振り回したり、側転したりできたら良いなと思っていたので、この方法で天井高約260cmを確保しました。
他にも単純に床を下げてもらう方法があるのですが、「フラット35」などのローンを利用する場合、床下の点検に関する基準から単純な床下げができないことがあります。
その点ベタ基礎の状態での引き渡しであれば審査を通すことができました。
調音について
防音室の内部で硬い面同士が向かい合っていると、音が響き合ってしまうため、吸音板を設置して響きを調整します。
床は全面が硬い素材のため、天井は基本的に全面吸音板となります。
吸音板の配置は「マイクに向かって声をだしたらパソコンのモニターに跳ね返るから、跳ね返った先、背後に吸音板を2枚置いて吸収しよう。」といった具合に、使い方に合わせて業者さんと相談しながら決めます。
生音を録りたい場合やホームシアター用途であればある程度の響きを残すため吸音板を減らし、マイク収録でリバーブはエフェクトで後からかけるという場合は吸音板を多めにする、といった調整が可能です。
吸音板は防音室の完成後でも追加や取り外しができます。
浮かせて配置しているのも見栄えや汚れ防止のためでしかなく、吸音効果は変わりません。
立てかけて自由に移動できるようにするのも良いでしょう。
やりたいことや機材の配置を防音業者さんに伝え、提案してもらってください。
防音室のある生活について
防音室があると夜中でも朝方でも自由に歌ったり騒いだりすることができます。
このレポ記事が、注文住宅に防音室を作ったり、リフォームしたりするときに、業者さんを見抜く手助けになればうれしいです。
私は良い業者さんを引くことができましたが、音漏れのトラブルはけっこうあるようです。
業者を見極めるのが難しいと感じる場合は、費用はかかりますがYAMAHAに依頼するのが安全だと思います。
余談ですが、断熱性能も高く、外出前に暖房を切っても帰宅時にまだ暖かい状態が保たれています。
一方で、インターホンの音が一切聞こえなかったり、電波がほとんど入らず携帯電話が鳴らなかったりといった不便もあります。
「せっかくリモートワークのために作ったものの、セキュリティ上会社支給のポケットWi-Fiで通信をする必要がある。しかし外からの電波をほぼ拾えず、使えない…」なんてことになっては問題です。
あとは流石にエアコンだけでは換気が足りないようなので、参考に防音室を作った人は、定期的に空気の入れ替えをしたほうが作業に集中できると思います。
防音室の発注レポートは以上です。
