ノイズ処理・ピッチ補正・タイミング補正など、下処理が終わったらいよいよMIX作業に入ります。
この記事では、音量バランスの調整、コンプレッサーとイコライザーの設定、パン振り、ゲインエンベロープでの調整まで解説します。
MIX用ファイルの準備
Studio Oneに戻ります。
念のため、録音時のデータを残しておくために、「ファイル」→「別名で保存」でMIX用のファイルを別に作成します。
Shiftキーを押しながらクリックで下処理前のトラックを全て選択し、右クリック→削除で消します。
下処理済みの音源を全てドラッグ&ドロップで読み込み、位置を合わせます。
スペースキーで再生し、音が大きすぎる場合は、ミックスタブを開いて各トラックの音量をフェーダーで下げてください。
それでも音量が大きい場合や全体的に音量を下げたい場合は、デスクトップ左下のスピーカーマークを右クリックして表示される、音量ミキサーで調整します。
音量バランスの初期調整
収録した音源に「全体的にここが小さい」という箇所がある場合は、先に上げておきます。
歌詞の一部分だけ「ん」とかが小さい、というのは後でかけるコンプレッサーである程度対処できますが、全体的に小さい箇所は元から上げておいたほうが自然です。
大きくしたいところをダブルクリックで切り出し、矢印でクリックして選択状態にします。
表示された、上の白い四角をクリックしながら上下で音量を変えます。
見づらい場合はCtrlキーを押しながらマウスホイールを転がして拡大したり、右下の編集タブから大きく表示したりすることもできます。
次に音量バランスを決めるため、オケとボーカル両方が大きくなるサビあたりをループ再生する準備をします。
ループ範囲を範囲指定し、ループ再生のアイコンを青く光らせておきます、
音量を見やすくするため、インスペクタも表示し、伸ばしておきましょう。
メインボーカルとオフボーカル以外のトラックは、いったんミュートしておきます。
再生しながら、オフボーカルの音量を-12~-10dBくらいまで下げます。
曲によってサビの音量が小さい曲もありますが、いったんこのあたりを目安にしてみてください。
Channel Stripの準備
ボーカルの音量調整をする前に、先にコンプレッサーとイコライザーを適用しておきます。
先にかけておく理由は、コンプレッサーとイコライザーで音量が変わるためです。
本来別々にかけたいところですが、Studio Oneの無料版では、コンプレッサーとイコライザーが合体した「Channel Strip」のみ使用できます。
「ブラウズ」→「エフェクト」から「Channel Strip」を、トラックの上か、ミックスタブのインサート欄にドラッグ&ドロップで適用します。
録音音量が-6dBに届いていない場合
エフェクトを考える前に、まずボーカルの音量を上げておきましょう。
「Channel Strip」の「Compress」を0にし、「Gain」のつまみをクリックしながら動かして音量を上げます。
ただの音量上げ用とわかるように、名前を変更しておくのがおすすめです。
エフェクト名を右クリックし、「名前を変更」から変更できます。
+12dBでも-6dBに届かない場合は、もう1つ同じように「Channel Strip」を追加します。
かけたエフェクトをクリックして別のトラックにドラッグすると、複製して両方に同じエフェクトをかけることができます。
改めて、エフェクト用の「Channel Strip」を追加しましょう。
コンプレッサー
コンプレッサーは、一定以上の音量を超えた部分を圧縮して、音量差を均すエフェクトです。
まだコンプレッサーをかけていない状態(「Compress」が0)だと、音量バーは大きくなったり小さくなったり差が激しい状態です。
「Compress」の数値を強くすると、閾値(どの程度の音量を超えたら均すか)とレシオ(超えた音量をどの程度に圧縮するか)が変わります。
再生してみると、黄色いバーが上から抵抗してきて、音量が上がりにくくなっているのがわかります。
圧縮した分だけ音量は小さくなるので、その分は「Gain」のつまみで持ち上げて補います。
FastとSlowの違い
「Fast」は閾値を超えた瞬間にすぐ圧縮し、「Slow」はゆっくり圧縮します。
ボーカルにかけてみると、黄色のバーの忙しなさの差がわかります。
「Slow」のほうが自然な仕上がりになりやすいです。
コンプレッサーの目安
かけすぎると平坦で迫力のないボーカルになってしまうため、控えめでよければ控えめにしてください。
目安としては、黄色のリダクションメーターと水色のレベルメーターが-6dBあたりで拮抗する程度です。
通常のパートでは-9~-6dBで歌わせて、強く歌うところ等は-6~-3dBに行くかな、というくらいの感覚です。
「Expander」は、かけても効果を実感しにくいため、いったん0のままで問題ないと思います。
イコライザー
イコライザーは、音の高いところや低いところなど、特定の帯域を削ったり持ち上げたりできるエフェクトです。
左から右へ低音→高音となっており、線が中心より上に持ち上がっている帯域の音量は大きく、下に行くほど小さくなります、
低域のカット
まず、聞き取れない雑音になりやすい超低音(0~100Hz)をばっさりカットします。
ベースなどと被りやすい100~300Hzあたりは、ゆるくカットします。
目安としてはLowのつまみを-18dB、150Hzに合わせたくらいの位置です。
このつまみの数値はグラフ上の点をクリックしながら動かせるほか、つまみ操作でも調整できます。
超短区間をループして、聞き比べながら削ってみてください。
100Hzと150Hzの差は耳ではわかりにくいですが、100Hzと200Hzであれば違いが聞き取れると思います。
迷ったらいったん150Hzで設定すると良いでしょう。
中高域の調整
サビ区間をループ再生しながらグラフ上の点を動かし、持ち上げるとボーカルがオケに埋もれずはっきり聞こえるポイントを探します。
高域を持ち上げるか、中域を持ち上げるか等、好みで構いません。
ボカロ曲に対抗して300~400Hzを急激にカットし、さっぱりした声にするのも一つの方法です。
最適解は声質、収録環境、曲、好みによって変わるため、わからなくなってきたらプリセットをクリックして、男の子用プリセットや女の子用プリセットを選ぶだけでも良いと思います。
何もかけていない状態で声質と曲がたまたまベストマッチしている可能性もあるため、イコライザーをかけないのが正解、という可能性もあります。
無料版のイコライザーの限界
本来はイコライザーで「この曲のギターのおいしい帯域と被るから、ボーカルのここだけ削ろう」「その代わりギターからはこの帯域を空けてもらうために削ろう」「ベースやドラムがない音源だから100Hzのカットだけ」といったように、凝った調整ができるものです。
ただ、無料版では中域や高域をおおざっぱにしか調整できず、帯域の不足を可視化する機能もありません。
凝り倒したい方は有料版の導入をおすすめします。
音が決まったときの「よくここ見つけたな」という感動が一番大きいはイコライザーだと思っているので、興味があれば時間をかけて触ってみてください。
イコライザーで上げた分、音量バランスが変わった場合は「Gain」で調整します。
この後のリバーブでまた音量が変わるため、ここでのバランス調整にはあまり時間をかけなくて大丈夫です。
ハモリやオクターブ下のトラックがある場合、同じようにコンプレッサーとイコライザーをかけます。
ハモリの音量は、メインとかなり近い音量で聴かせるデュエット曲もあれば、聞こえるかどうかくらいのうっすらとした音量で響きを補強する曲もあるため、一概には言えません。
自分の好みか、本家様を参考に、耳で聞きながら調整してみてください。
パン振り
音量を決め切る前に、ハモリがあるならパン振りをしておきます。
パン振りでは、左右に音を振り分けることで、「真ん中で混ざりながらごちゃごちゃもわもわ聞こえる」印象を避けられます。
左右どちらに振るか迷ったとき、おすすめは両側に振ることです。
ハモリのトラックを右クリック→「トラックを複製(完全)」で2つにし、片方をL(左)、もう片方をR(右)に振ります。
この時点ではまだ、何も変わっていません。
左右のスピーカーから同じ音が出ているため、結局真ん中にあるのと変わらない状況です。
「全く同じ音が同時に出ている」状態を壊すために、インスペクタのディレイ欄に10と入力し、片方を10msだけディレイ(遅延)させます。
遅らせたほうが少し小さく聞こえるため、バランスを取るために遅らせた側のゲインを、Channel Stripで+1~2db上げておきます。
ハモリを含めた全トラックを鳴らした状態で、音量を合わせ直しましょう。
ここで音量調整はだいたい終わらせておきます。
ゲインエンベロープによる細かな音量調整
同じトラックの中で一部分だけ音量を変えたいとき、例えば「Bメロからサビに入るところで音量をドンと上げたい」「サビ前は2dB小さいところから徐々に上げていきたい」というときに使うのがゲインエンベロープです。
繋がっている一部分を上げたいとき、徐々に音量を変えたいときに使用します。
無音から無音までの全体を上下させるなら切り出しで十分です。
イベントを右クリックして「ゲインエンベロープ」にチェックを入れると、白い線が表示されます。
クリックで点を打つことができます。
2点打って片方を下げれば、点から点へ音量を変化させられます。
間に出る半透明の丸をクリックしながら上下させると、変化度合いを緩やかにしたり急にしたりできます。
上げ下げした後は、前後と音量の差を感じないか必ずチェックしてください。
白丸をダブルクリックすると取り消しできます。
3点打てば、その部分だけを上げることもできます。
歌詞の1文字1文字に対してやるのは根気バトルになるため、そこまでの微調整をする場合はリバーブなどのエフェクトをかけた後で行うのがよいでしょう。
作り込む意気込みで出す音源でなければ、スルーしても構いません。
音量調整・コンプレッサー・イコライザー・パン振りは以上です。


